今昔物語集冒頭を詠む 天上に ブッダとなりぬ 菩薩あり

今昔物語集を原文表記で読み始めました。地上ではブッダとして知られている存在が天界にいた頃の話から物語は始まります。ブッダは自ら地上に下ることを決め、天空人としての能力や状態を消滅させることで地上に降りたという話でした。われわれ人間がはたしてどこからきたのか、そしてどこへいくのかは、いまだもって謎とされています。もしわれわれが生れる前の記憶を持ち死んだ後もどこかへゆくのであれば、それはきっとブッダが暮らしていた天界かもしれません。われわれ人間は現生の記憶もあいまいなままに、生れる前の記憶などは遠いどこかへといってしまっています。それがあるないかは問題ではないでしょう。きっと問題なのは自分の中に過去の永きにわたってどれだけの記憶がとどまっているかではないかと思います。私も記憶があいまいなほうで、過去のことはなかなか思い出すことができませんが、記憶をたどればきっとどこか遠い世界につながっている、そんな風に思います。少なくともこの生を受けてからの足取りは生れたときから存在するのですから。